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夢街道
はじめに
元町、という地名が登場するのは明治七年の五月である。以来、町名の根拠は、はじめにできたまち、もとのまちということになっている。
はじめに
2000/03/01
夢街道
元町、という地名が登場するのは明治七年の五月である。以来、町名の根拠は、はじめにできたまち、もとのまちということになっている。
住民の声を聞くということもなく、あっさりと、一方的にきめてしまった。もとのまちといわれれば、全くそのとおり、と答えざるをえない。住民投票にかけられたにしても、反対のしようもない町名であったともいえる。
「元」という根源的な概念をそのまままちの名前にスライドさせたもので、「元町」は時間の概念を符号にした初めてのまちかも知れない。
人の考えることはどこの地域でも大差なく、「元町」の名前はひろく日本中に生まれ、そこはまちの中心をなす商店街になった。数年前、そんな商店街が一堂に会する「全国元町サミット」が開かれたが、神戸の元町も、横浜の元町とともに、元町の親分格として参加した。
時間の概念を符号にしたまちは、年をへるごとに艶をかさねてきた。他の地域にある同名のまちのなかには、艶よりもさびがこびりついて、動きがとれなくなったところもある。しかし神戸の場合、時間の積みかさねが、そのまままちに磨きをかける方向に働いてきた。はじめのまちでありながら、120年を越えるいまも、立派にまちのいのちを燃やしつづけていることでわかる。
元町の元気の源はどこにあるのか。これからも元気でありつづけていくためには、その源を知っておくことが大切である。その源から、これからも元気を保つための活力源を吸収できないか。そんな思いから、「元町」を発生源とするものや人の動きなど、独断や偏見もまじえながら探ってみたいと考えていた。
担当するのは、本紙の編集部と元町夢街道取材班のメンバーである。手薄なスタッフだが、始めなければ何もみえてこない。無謀のそしりは免れないが、扉をたたくことにした。
間違いや新しい資料など、つど編集部までお寄せいただけるとありがたい。話をすすめるうえで、道案内の中心にすえたのは、開港三十年史などである。その他、多くの方や資料のお世話になるが、連載が終わってからまとめて紹介させていただく。
いまの元町商店街一帯は、慶応から明治に移るころ、三つの寒村に分けられていた。珍客でもあれば、もてなすための酒肴を求めに走る先は兵庫のまちである。元町の名前すら想像もできなかったころ、その地に暮らす人々にとって、兵庫は夢のような都会だった。元町に住む村の人たちが、酒肴を買いに走ったという、元町にとっては西の玄関口にもあたる兵庫のまちからのぞいてみることにしよう。
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